人気ブログランキング | 話題のタグを見る

キャンディはワンコである

kazuko9244.exblog.jp
ブログトップ

『時間外のルベウス』 ④



 「やっと見つけました。あなたに任せて良かった。本当に向こうからやって来るように仕向けるとは、さすがですね。」
 ミキたちが帰った後、宝石店の奥の扉が開き、黒いスーツを着た男が現れた。、さっきまでミキが座っていたソファへと腰をおろす。
「今日という日をどんなに待っていたことか。思った通り、美しい娘ですね。」
 鋭い目つきで老人を見つめながら彼は言った。金色に輝く髪に、彫りの深い顔。まだ若い張りのある色白の肌。まるで外国人のように見えるが、喋っているのは日本語。それも耳に心地よく響く美しい日本語だ。あまりにアンバランスのように感じるが、何よりも違和感があるのは、その鋭い視線を放っている瞳の色である。その瞳は、店のショーケースの中に並べられているルビーの色、まさしく燃え上がるような赤だった。
「これで私も動き出すことが出来ます。」
 口の端を少し吊り上げながら彼は言った。そして老人は、大役を終えた役者のように満足気な笑みを浮かべて大きく息を吐き出した。

「それにしても寒いですね。何度ですか?」
 肩をすくめて瞬きをしながら男は身震いをした。
「三十二度くらいですがねえ。」

「凍りそうだ、ここは。」

 
  
  つづく
by kazuko9244 | 2012-04-29 22:05 | フィクション

キャンディ(ウェスティ)・ミルキー(ヨーキー)・とーさん・私の毎日の一部分♪


by kazuko9244