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キャンディはワンコである

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 (ねえ、お母さん)
 女の子の声がする。子供特有の高く澄んだ声。それに答えるように大人の女性の声がした。目を開けると、見慣れた天井があった。ミキの部屋だ。ミキのベッドの上にいる。今までのあれは夢だったのかと喜びのあまり飛び起きて部屋から出た。
 階下からまた声がする。
(ねえ、お母さあん)
 誰か親戚でも来ているのだろうか、どうやら親子のようだ。声の様子から、あんな小さな子供が親戚の中にいただろうかと考えてみたがそのような子供は見たことがない。ならば、近所の親子が母のところに遊びにでも来ているのだろうか・・・そっと階段を降りて会話に近づいていく。階段のすぐ右側にある台所で、子供と女性はなにやら食器などを動かしているようだ。料理でもしているのだろうか、まな板を包丁でたたく音もし始めた。ミキはほんの数センチ、ドアをずらして覗いてみた。
 親戚ではない。近所の人でもない。母だ。ミキの母の背中が見える。そのすぐ傍に小学校低学年くらいの少女が母の方を向いてしきりに訴えている。
(帰りたいよお)
(ここはミキの家でしょ、お部屋で寝てなくちゃだめじゃないの。熱があるんだから。)
 そっと見ていたミキは、はっとした。思い出した。あの少女は私だ。いつもああやって台所に立つ母の横で話しかけるのが好きだった。そう思って見てみると、昔の写真に写っているミキとそっくりのようだった。写真でしか自分の幼い頃を見ることなどないし、それが動いて話しているのだからすぐには解らなかった。声だって、普段自分で自分の声を客観的に聞くことなど殆どないのだから、気が付かなかった。いや、気付く訳がない、わかる訳がないのだ。こんな光景など目にしている方がおかしいのだから。
(ほらほら、寝てなさい。熱がいっぱい出てるのよ。学校だって休んでるんだから。) 
 母が幼いミキを急きたてながらこちらへ向かって来た。ミキはドアから離れ、二人をよけようとした。が、よろけて後ろの壁に手をついた。幸い、音はせず、二人は気付かずに怪談を上って行った。ミキは台所へ入り、さっと見回してみた。今朝過ごした台所と何ら変わったところはない。電気製品が少し違ったものが見られるくらいだ。
 冷蔵庫に、一枚の絵が貼ってあった。四方を丸いプラスチックの付いた磁石で留めてある。その絵は、絵具で描かれていて、見た瞬間、ミキはそれに何が描いてあるのかわかった。ミキが昔、一番好きだった日本の昔話でよく絵本を母に呼んでもらっていた「かぐや姫」の一場面だ。斜めに切れた竹の中に、小さな赤ちゃんが入っていて、口を大きく開けて泣いている。周りは金色に輝き、その横にお爺さんの驚いた横顔がある。それはその本の中で一番好きな場面の絵を真似して描いたものだった。こんな絵を描いたのはいつのことだったのだろう、ミキは下の角を留めてある磁石を外し、めくってみた。すると、「一ねん三くみ・たどころみき」と書いてある。小学一年生か。そうだったのかもしれない。今となってはもう遠くてはっきりとは思い出せないけれど。ミキは磁石を元に戻し、台所の隣のリビングへ目を向けた。こちらはカーテンが違っているので、雰囲気がガラリと変わったような気がする。しかし、そのカーテンでよく遊んだものだった。掃き出しの窓を開けると、春にはそよ風が吹き込み、カーテンが半円に広がる。そこへ入って自分だけの場所、という気になって遊んだ。好きだった絵を描く道具を持ち込み、よく描いたりしていた。台所のテーブルの下に入っておやつを食べたり、外では開いた傘を何本も使って囲いを作り、その中で遊んだりもした。懐かしい気持ちが込み上げて来る。ミキはその隣の和室にも行き、今自分が暮らしている各部屋、変わりないようで少し若く、同じ家具でありながら、置く位置で表情が違って見える姿を楽しそうに見ていた。
 階段を下りて来るスリッパのパタパタという音が聞こえた。母が戻って来たのだ。途中だった夕飯の支度を続け始めたのを確かめて、ミキは階段を上った。


    つづく
# by kazuko9244 | 2012-05-06 20:23 | フィクション

ワンコたち。

ワンコたち。_a0162394_1751248.jpg

連休中も毎朝、夕の運動に連れて行ってもらったワンコたち。

ミルキーはとーさんの服の上にすぐ乗っかるのよね(´・_・`)

さてと、後はゴハンを待つだけさ(^○^)
# by kazuko9244 | 2012-05-06 17:51 | 携帯から

連休終わりますよ

連休終わりますよ_a0162394_9303829.jpg

今日でGW終わりますね。

何したかなぁ〜

ポノボノくんが増えたなぁ。

真ん中の、サイズ小なのは、おととしにウチに来たボノボノくん。

かわいいね〜

陶芸家の佐々木りつ子さん、私ら夫婦のことを覚えていてくださった♪

感激〜〜

とーさんの実家に田植えのお手伝いに一日帰ったなぁ。

私は姪っ子とワンコたちと遊ばせてもらったんよ。

中三、小四、四歳の姪っ子たち。

もう、可愛くてメロメロ。

ダックス、ミックス、ウェスティ、ヨーキーのワンコたち。

ワン社会にもいろいろあると感じたよ〜

バーベキューも、美味しかった〜
焚き火も出来たよ。



最近、自作のフィクションをブログに載せることにしたんよ。

これはもう、14年くらい前に書いたものなんよ。

下手なんじゃけどね、数人の方々が、見に来て下さってるようなんよ〜嬉しいから続けるつもり。

ほんま、下手なんよ。

暇つぶしに見てね。

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さぁ〜てと。

洗濯物干そうっと。

爪も切らないと。自分で自分を引っ掻いてしまって…

痛いのよ〜

これも老化かね〜

またね〜。
# by kazuko9244 | 2012-05-06 09:30 | ひとりごと
 熱と混乱で視界はぼやけ、頭はクラクラしていた。目の前のロウの姿が薄く白い膜に覆われて行くようだ。ミキは頭を横に振り、意識をきちんと保とうと努力したが、どうしても耐えられなくなり、頭を支えながらベッドの上に崩れた。するとそれを見たロウは指輪に向かってまた何か言葉を発した。ミキには理解など出来ない。聴きとる事さえ難しかった。
 ドアが開く音がした。人が入って来たような足音が近づく。ミキにはそれがどんな人物なのか見る事が出来なかった。目を開けられないくらいに瞼が重い。激しい睡魔に襲われたみたいだ。眠くなど全くないのに、顔の筋肉が思うように動かない。仰向けに寝転んで頭を抱えた状態のままもがいていると、熱いものが右腕に触れた。それには力があり、ミキの腕を頭から引き離し、押さえ付けた。目が開けず、何も見ることが出来ないミキは、悲鳴を上げた。恐怖で満たされた全身は、バタバタと暴れていた。耳元で金属音がした。カチャリ。一瞬、腕に痛みが走って、ある一点に神経が集中した。頭の中は真っ白になってしまい、動きも止まった。頭上で話し声が聞こえた。理解出来ない言葉を二人が交わしている。一人はロウの声だ。くぐもったような声、さっき聞いたものだ。再び金属音がした。何やらカチャカチャとさせて、足音がそばから離れて行った。ドアの開く音、足音、ドアの閉まる音、もう一人は出て行ったようだ。
「これで少しは楽になるでしょう。自分の力で適応するのが望ましいのですが、今のあなたには無理のようなので、ちょっとした薬を打ちました。」
 ロウの低く静かな声がした。ミキの身体はぐったりとして力が抜けていた。口を開いて何かを言おうという気にもなれなかった。ただ、耳だけは聞こえた。ロウの話す日本語はちゃんと聞きとる事が出来る。それと、両腕の火傷のようなヒリヒリした痛みも感じていた。自分が自分でないような不気味な感覚の中で、ミキは必死に願った。
 これが夢でありますように。
「あなたが一緒なら、地球を救うことが出来ます。」
 ロウが言った。ミキの意識がその言葉によって、混乱する以前に引き戻された。そうだ、ロウと一緒に紫色の地球の映像を見ていたのだった。ロウは地球が病んでいるのだと言ったのだ。そして自分はロウに向かって治せと言った。そうだ、思い出した。そして今、彼は私が一緒なら救える、そう言った。思い出したことで、パニックを起こしていた頭脳が正常に働き始めた。落ち着きを取り戻したようであることをミキは自分で感じていた。だんだんと身体が楽になり、ミキの意識を深く深く心の底へ沈めていった。


   つづく
# by kazuko9244 | 2012-05-05 20:26 | フィクション


 バイト先の店に着き、仕事に就いた。レジに立ち、店を見回す。二十坪の店内には、タケシが来た時から客は一人もいなかった。夕方のこの時間、客が一人もいないなんてことは珍しい。普段は入れ替わり立ち替わり何人かの客がいるものだ。一瞬、途切れることもあることはあるけれど。今がその一瞬なのだろうと思い、何気なく店の入り口から外を見てみた。ドアは開かない。外の通りの真向かいに喫茶店がある。男性が一人窓辺の席で新聞を広げて読んでいる。動きはない。日曜日だというのに人通りが少ない。こんな日もあるのだな、と何気なく見た場所、店の前にゴミが落ちている。どうやらタバコの空箱をぐしゃりとひねって捨ててあるようだ。全く、道にゴミなんか捨てやがって、ゴミはゴミ箱に捨てるもんだろ、などと常識に欠ける誰かにぶつぶつ言いながら外へ出て、かがんでそれを拾い、店の中に入ろうとしてふと通りに目をやった。一瞬、異様な雰囲気をタケシは感じた。数メートル先を歩いている人がこちらを向いて止まっている。視線は少し高めで、右足を前へ出し、左足のかかとは浮いている。こちらを見ているようで、見ていない。歩く途中の姿勢で止まっているのだ。周囲を見回すと、行き交う筈の人々全てが止まっている。幼い頃にやった、だるまさんがころんだ、という遊びを思い出した。鬼役の子供が壁に向かって、だるまさんがころんだ、と叫んでいる間に一斉にスタートした他の何人かの子供は鬼に近づいて行く。振り返った鬼に、動くのを見られたら鬼の手に繋がれてしまい、だんだんと近づいて来る他の子供が鬼の背中にタッチするまで逃げられない、という遊びだ。今の、この通りにいる人々は、一瞬止まった子供たちを思わせた。しかし彼等は今、だるまさんがころんだ、をして遊んでいる訳ではない筈だ。単純に止まっているのだ。凍りついたように、固まってしまったように。タケシは愕然とした。何だこれ、どうなってんだ?と呟いた。そして慌てて店の中へ戻り、時計を見た。六時丁度。秒針は動いていない。タケシは再び店を飛び出し、走り出した。店の前の通りを抜け、大通りへと出てみた。何処へ行っても何処まで行っても、人も、車も、何もかも、動いていなければならないもの全てが静止していた。
 そして、音さえも消えていた。


   つづく
# by kazuko9244 | 2012-05-04 22:07 | フィクション

キャンディ(ウェスティ)・ミルキー(ヨーキー)・とーさん・私の毎日の一部分♪


by kazuko9244